九州大学大学院薬学研究院
環境調和創薬化学分野

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カルボン酸等価体・無保護カルボン酸の触媒的α–官能基化反応

 カルボン酸や、エステル・アミドといったカルボン酸誘導体は、医薬品や天然物をはじめとする機能性分子中に数多く見られる重要な構造です。そのため、様々なカルボン酸誘導体の効率的な合成法の開発が求められています。
 カルボニル化合物のα–修飾反応においてエノラートは重要な中間体であり、求核剤であるエノラートは教科書的には求電子剤との反応に利用されることが一般的です。しかし、そのような古典的なイオン型反応では克服困難な課題が数多く残されていました。
 そこで当研究室では、古典的なイオン型反応を補完するために触媒ごとの性質を活かした非古典的α–官能基化反応の開発に取り組んできました。研究成果として、銅を用いたナイトレノイド型α–アミノ化反応やラジカル型α–酸化反応、鉄を用いたラジカル型α–アルキル化反応を報告しています。
 

 
 
 しかし、これらの反応は効率的なエノラート形成のために、基質として配向基を有するカルボン酸等価体を利用しているため配向基の着脱が必須であり、工程数の増加やそれに起因した合成範囲の制限が課題となっていました。そこで、入手性および変換反応の多様性の観点からより理想的なビルディングブロックであるカルボン酸に注目し、無保護カルボン酸の触媒的官能基化反応の開発に近年取り組んでいます。研究成果として、世界に先駆けて鉄・アルカリ金属協働型触媒系でのラジカル型α–酸化反応を報告しています。
 

 
 
<代表論文>
1. Keisuke Tokumasu, Ryo Yazaki, Takashi Ohshima
J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 2664–2669. DOI: 10.1021/jacs.5b11773
 
2. Seiya Taninokuchi, Ryo Yazaki, Takashi Ohshima
Org. Lett. 2017, 19, 3187–3190. DOI: 10.1021/acs.orglett.7b01293
 
3. Tsukushi Tanaka, Kayoko Hashiguchi, Takafumi Tanaka, Ryo Yazaki, Takashi Ohshima
ACS Catal. 2018, 8, 8430–8440. DOI: 10.1021/acscatal.8b02361
 
4. Tsukushi Tanaka, Ryo Yazaki, Takashi Ohshima
J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 4517–4524. DOI: 10.1021/jacs.0c00727
 
5. Tsukushi Tanaka, Yunosuke Koga, Yusaku Honda, Akito Tsuruta, Naoya Matsunaga, Satoru Koyanagi, Shigehiro Ohdo, Ryo Yazaki, Takashi Ohshima
Nat. Synth. 2022, in press. DOI: 10.1038/s44160-022-00139-9