九州大学大学院薬学研究院
環境調和創薬化学分野

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立体障害型非天然α–アミノ酸合成

 非天然α–アミノ酸であるα,α–二置換–α–アミノ酸は医薬品や有機触媒等に多く見られる構造です。そのため、より効率的な合成法の開発は医薬化学および合成化学において重要な課題の一つであり、古くより盛んに研究が行われてきました。この非天然α–アミノ酸の化学的合成法の一つとしてα位の酸性度が向上したアミノ酸等価体であるアズラクトンを基質として用いた反応が広く用いられています。しかし、これまでの合成法ではアズラクトンは一般的に求核剤として、求電子剤とのクロスカップリング反応に用いられてきました。一方で、求核剤との反応に用いられる例はほとんど報告がなく、未発展の研究領域でした。
 そのような背景のもと、当研究室では鉄触媒を用いた脱水素型クロスカップリング反応の開発に取り組んできました。アズラクトンは鉄触媒および酸化剤存在化で容易にダイマー化します。このダイマーが均等開裂または不均等開裂を起こすことで生じるラジカル種やカチオン種を中間体として利用し、求核剤とのクロスカップリング反応を報告しました。
 

 
 
 しかし、アズラクトンを利用する本手法は、α–アミノ酸合成という観点において原料合成および変換反応が多工程であるため、環境調和性や基質適用範囲に改善の余地を残していました。そこで近年では、より簡便に合成・変換が可能なα–アミノ酸Schiff塩基をラジカルプラットフォームとしたクロスカップリング反応の開発も行っています。本反応ではこれまで合成困難であったα位とβ位がそれぞれ四置換炭素となった、立体障害の大きな非天然α–アミノ酸を合成することが可能です。
 

 
 
<代表論文>
1. Takafumi Tanaka, Tsukushi Tanaka, Taro Tsuji, Ryo Yazaki, Takashi Ohshima
Org. Lett. 2018, 20, 3541–3544. DOI: 10.1021/acs.orglett.8b01313
 
2. Taro Tsuji, Takafumi Tanaka, Tsukushi Tanaka, Ryo Yazaki, Takashi Ohshima
Org. Lett. 2020, 22, 4164–4170. DOI: 10.1021/acs.orglett.0c01248
 
3. Yohei Matsumoto, Jun Sawamura, Yumi Murata, Takashi Nishikata, Ryo Yazaki, Takashi Ohshima
J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 18, 8498–8505. DOI: 10.1021/jacs.0c02707
 
4. Tetsu Ikeda, Haruka Ochiishi, Mana Yoshida, Ryo Yazaki, Takashi Ohshima
Org. Lett. 202224, 369−373. DOI: 10.1021/acs.orglett.1c04042
 
5. Taro Tsuji, Kayoko Hashiguchi, Mana Yoshida, Tetsu Ikeda, Yunosuke Koga, Yusaku Honda, Tsukushi Tanaka, Suyong Re, Kenji Mizuguchi, Daisuke Takahashi, Ryo Yazaki, Takashi Ohshima
Nat. Synth. 2022, 1, 304–312. DOI: 10.1038/s44160-022-00037-0