九州大学大学院薬学研究院
環境調和創薬化学分野

【論文】かさ高い非天然α-アミノ酸の新規合成法の開発(Nat. Synth. 2022)

2022年03月24日

 
 

α-Amino acid and peptide synthesis using catalytic cross-dehydrogenative coupling
Taro Tsuji, Kayoko Hashiguchi, Mana Yoshida, Tetsu Ikeda, Yunosuke Koga, Yusaku Honda, Tsukushi Tanaka, Suyong Re, Kenji Mizuguchi, Daisuke Takahashi, Ryo Yazaki, Takashi Ohshima
Nat. Synth. 2022, 1, 304–312. DOI: 10.1038/s44160-022-00037-0 


ついに公開されましたNature Synthesis。本記事筆者が当研究室に配属になった6年前には既に存在していたテーマなのですが、長い年月をかけてついに完成しました。本テーマに直接関わることはありませんでしたが、そのほぼ一部始終を見届けることができたので少し感慨深いです。今回も先生方と共著者の学生からコメントをいただきました。


● 矢崎先生
 汎用性の高い原料を用いた非天然α-アミノ酸の合成法を開発し、かさ高い非天然α-アミノ酸を導入したペプチドの創出に成功しました。さらに、円偏光二色性スペクトル法とインシリコ構造解析を用いることで、独自のかさ高い非天然α-アミノ酸がペプチド構造を安定化することも明らかになりました。現在、中分子ペプチド医薬品などの高機能ペプチド材料開発の基盤技術として応用研究を行なっており、今後の展開が楽しみです。


● 大嶋先生
 長年にわたって非天然α-アミノ酸をいかに効率的に合成できるか、様々な方法の検討を行ってきました。今回の研究は矢崎助教を中心としたプロジェクトであり、反応性の高いラジカル種を活用することで、これまで誰も合成したことがない嵩高い非天然α-アミノ酸の合成が可能となった点で画期的だと思っています。また、初めて合成できるようになったからこそ、その有用性は我々自身が証明する必要がありましたが、九大薬のグリーンファルマ研究の一環として、多くの先生方との共同研究を通じて、新たな創薬モダリティ「非天然型中分子ペプチド」創出に繋がったことに心より感謝しています。
反応開発から中分子ペプチドの合成まで、頑張って研究を仕上げてくれた学生の努力の結晶です。
 


共著者の学生のうち、現在も研究室に在籍している3人にコメントいただきました。

●  辻汰朗
 本研究は、自分以外にも大勢の優秀な方たちが関わってできた情熱の結晶です。大局を見据え一つ一つ導いてくださった先生方、先人をきって直接手取り足取り教えてくださった先輩方や、論文化に至り身を粉にして手伝ってくださった後輩方に熱くお礼を申し上げます。本当にありがとうございました!
 
 ● 古賀祐之介
 本論文に関わらせて頂き自分自身大きく成長することが出来ました。指導いただいた大嶋先生、矢崎先生、先輩方、共同研究に携わっていただいた先生方に深く感謝致します。ありがとうございました。

 ● 本多優作
 本研究に関わることが出来、大変貴重な経験となりました。相談に乗ってくれた先輩方や指導してくださった先生方に感謝申し上げます。ありがとうございました。

※本研究について、九州大学、医薬基盤研究所(NIBIO)、日本医療研究開発機構(AMED)よりプレスリリースされました( 九州大学NIBIOAMED
※薬学部のホームページでも研究が紹介されました( 九州大学薬学部) 
※学術変革領域研究A「デジタル有機合成」のホームページでも研究が紹介されました( デジタル有機合成) 
※Chem-Stationのスポットライトリサーチで研究が紹介されました( Chem-Station